我、京大生ぞ

現役京大生の雑記。メインテーマは大学受験とプログラミングと英語と京大の日常

筆算の掛け算がなぜ正しい答えになるのか証明してみる

f:id:a86223990:20180827174623j:plain


こんにちは、京大生ブロガーのゲーテ(@goethe_kyodai)です。
 
 
みなさん小学校で筆算の掛け算って習いましたよね?


f:id:a86223990:20180827175103j:plain


これをできない人はいないと思いますが、「なんでこれが正しい答えを導くか」を説明できる人は少ないと思います。


教えられてないので当然ですね。小1か小2で習うので、「正しい答えが出る証明」みたいな厳密な議論をしても理解できないですし、まず教師が分かってるかどうかも怪しいです(笑)。


ということで、筆算の掛け算がなぜ正しい答えを出すのか証明してみましょう。まずは567 × 78という筆算の掛け算の下図で示す所の計算から見てみましょう。


f:id:a86223990:20180827175219j:plain


上の赤く囲った段で行った8 × 7、8 × 6、8 × 5という計算は、それぞれ


8× 7 → 8× ( 567の1桁目の数字 )

8× 6 → 8× ( 567の2桁目の数字 )

8× 5 → 8× ( 567の3桁目の数字 )


と言い換えることができます。


でもこれは正しくありません。


実際の計算を反映すると、8× 7、8× 6、8× 5の計算結果はそれぞれ筆算で1桁目、2桁目、3桁目と別々の場所に書かれてい流ので桁を考慮すると、8× 7、8× 6、8× 5はそれぞれ


8× 7 → 8× ( 567の1桁目の数字 × 10^0 )

8× 6 → 8× ( 567の2桁目の数字 × 10^1 )

8× 5 → 8× ( 567の3桁目の数字 × 10^2 )


と言い換えられます。


さらに、この計算の「8」というのは「78の1桁目 × 10^0と言い換えられるので


8× 7 → ( 78の1桁目 × 10^0) × ( 567の1桁目の数字 × 10^0 )

8× 6 → ( 78の1桁目 × 10^0) × ( 567の2桁目の数字 × 10^1 )

8× 5 → ( 78の1桁目 × 10^0) × ( 567の3桁目の数字 × 10^2 )


となります。下の赤い枠で囲った計算も同じようにできます。


f:id:a86223990:20180827175234j:plain


上の図で行なった7 × 7、7 × 6、7 × 5という計算も、さっきと同じようにして、


7 × 7 → ( 78の2桁目 × 10^1 ) × ( 567の1桁目の数字 × 10^0 )

7 × 6 → ( 78の2桁目 × 10^1 ) × ( 567の2桁目の数字 × 10^1 )

7 × 5 → ( 78の2桁目 × 10^1 ) × ( 567の3桁目の数字 × 10^2 )


ということになります。


まとめると、567 × 78の筆算というのは、8× 7、8× 6、8× 5、7 × 7、7 × 6、7 × 5という計算をすることで。


(78の1桁目 × 10^0) × (567の1桁目の数字 × 10^0)

(78の1桁目 × 10^0) × (567の2桁目の数字 × 10^1)

(78の1桁目 × 10^0) × (567の3桁目の数字 × 10^2)

(78の2桁目 × 10^1) × (567の1桁目の数字 × 10^0)

(78の2桁目 × 10^1) × (567の2桁目の数字 × 10^1)


全部足したもの(総和)を567 × 78の筆算の掛け算の答えとして出しています。


つまり


567 × 78

=

(78の1桁目 × 10^0) × (567の1桁目の数字 × 10^0)

(78の1桁目 × 10^0) × (567の2桁目の数字 × 10^1)

(78の1桁目 × 10^0) × (567の3桁目の数字 × 10^2)

(78の2桁目 × 10^1) × (567の1桁目の数字 × 10^0)

(78の2桁目 × 10^1) × (567の2桁目の数字 × 10^1)

(78の2桁目 × 10^1) × (567の3桁目の数字 × 10^2)

(78の1桁目 × 10^0 + 78の2桁目 × 10^1)

×

(567の1桁目の数字 × 10^0 + 567の2桁目の数字 × 10^1 + 567の3桁目の数字 × 10^2)


です。


このように、2つの整数をそれぞれ位ごとの和の形で表して掛け合わせ、(a+b)(c+d) = ac + ad + bc + bd のように、展開して計算したのが筆算の掛け算の正体なのです。


最後にこの話を一般化しましょう。


あるm桁の整数をM、あるn桁の整数をNとします。


そして、Mの各桁の数字をa_i (i = 1,2,...,m)、Nの各桁の数字をb_i ( i = 1,2,...,n)とします。


そうすると、MとNはそれぞれ


M =  \sum_{i = 1}^{m} 10^{i - 1}a_i

N =  \sum_{i = 1}^{n} 10^{i - 1}b_i


と表せます。


下準備が終わりました。


MとNを掛け合わせる筆算の掛け算を式で表すと


M × N = \sum_{i = 1}^{m} a_i 10^{i - 1} × \sum_{i = 1}^{n} b_i 10^{i - 1}


です。これで一般化できました。筆算の掛け算というのはこの同値変形の式を利用して計算をしているんです。


これが一般の筆算の掛け算の本質を表す式です。筆算の掛け算を考えた人の頭の中にはこの式があったことでしょう。
 

もし小学生の息子が「やり方はわかるけどなんでこれで正しい答えを導けるのか分からない」とごねだしたら、この式を教えてあげましょう。
 



大学数学と高校数学の違い


大学数学と高校数学の違い - 我、京大生ぞ